妖精のテーブルのこと

子供のころのはなし。ちょっと不思議だけど、もう確かめようもないはなし。

私が小さい頃、家にはダイニングテーブルがあって、家族みんなそこでご飯を食べていた。

でも使っていたのは少しの間で、すぐに「低いテーブルに座布団」っていうのが定着したんだけど…父の希望だったか…一番下の妹が生まれてうまく席が作れなくなったからなのか…そのあたりは思い出せない。

ただ単に模様替えしただけなのかな?それがいつだったかもわからないけれど…。

私の記憶って本当に曖昧で、自分が小さい頃の思い出をたくさん話す人を見ると「なんでそんなに覚えてるんだろう…」って不思議になる。数年前の記憶でさえも、ものすごく断片的だし、覚えているとしても何の意味もないような、こういう記憶だけだから…。

それに、なんにも関係ないときに思い出してしばらく頭の中に居座る。なんの意味もないのに。

 

 

妖精のテーブル

 

そう、テーブルの話なんだけど、色が薄い木目のテーブルで、両側の板を畳むことで少し小さめのテーブルとしても使えるものだった。両親にとって私が第一子なので、この先もっと家族が増えてもいいように、サイズが変えられるものを選んだのかもしれない。

私はそのテーブルが大好きだった。

それは食いしん坊の私がごはんを食べるのが好きだからとか、怒られても上によじ登るのが好きだったとかもあると思うけれど、なによりも自分の座る位置にかわいい妖精さんの絵が描いてあったからだった。

本当に小さい小さいもので、木目の間に紛れるようにあった。自分でも見つけるのに時間がかかるくらいの小ささで、飛んでいる妖精を横から描いてある絵だった。

その後ろにはさらに小さく小さく星が3つ飛んでいて、たぶん妖精の羽から出てるんだろうなって思ってた。

そのテーブルに座るたびに、木目に指をすべらせて「妖精さんどこだっけ」ってするのが楽しかった。少し時間がかかるときもあったけれど、毎回ちゃんと妖精は見つけられて、そのたびに嬉しかった。

すごく小さくて顔までは見えないんだけど、ピンクと緑の色が見えたのは覚えてる。羽根の色なのか服の色なのかまでは思い出せない…。

いつも変わらずそこにあって、他のところにはないってことは、すっごく小さいシールが貼ってあるのかな?とか思ってた。

そんな小さいものを見つけられたのも嬉しくて、得意になって母と妹に教えた。「ねぇねぇ!ここ!妖精さんがかいてあるんだよ!ちっさいの!」
妖精の場所を指でさして「ほんとだー!よく見つけたねー!」って言ってくれるのを待ってた。

 

 

でも母は「どこに?描いてあるの?」っていう反応だった。一生懸命に指さして、ここに左向きでいる!ティンカーベルみたいな羽根の妖精がかいてある!って言うんだけど、何度見てもらっても母には見えないみたいだった。

すごく不思議だったのを覚えてる。

今日なら見えるかな?って何回も教えるんだけど、どうやら一向に見える気配はないし「そっかー♪いいねー。妖精さんの席なんだねー」って優しく返されるようになった。

○○ごっこのイマジナリーフレンド的な…そういう遊びだと思われたんだと思う。

母は私と同じように目が悪く、そのころも眼鏡をかけて生活していたので「ママは目が悪いから見えないんだ…」ってことで納得することにした。

なぜなら目のいい妹には見えているみたいだったから。

2人で「妖精さん探ししよ!」ってテーブルの木目の中を探すのが何日か続いた。『となりのトトロ』が好きだったこともあって「大人には見えないんだ!」っていうわくわくどきどき感で夢中になって、ある時、もともとあった場所の他にも妖精を見つけることができた。

「ここにもいるー!(妹)ちゃん見てみてー!」て言ったら妹も「ほんとだー!かわいー!」って言ってくれて、やっぱり子どもには見えるんだねーってなってた。

2つ目の妖精は青っぽい羽根の色で、最初に見つけたものよりもまた少し小さかった。星は出ていなかったし。

 

 

そんな風に何日かしてから妹が「ここにも妖精さんいたー!」ってまた別の端を指さした。もっとあったんだ!ってのぞき込んで、妹の指の先にある木目に目を凝らして妖精の絵を探した。

でも、私には見えなかった。ピンクだよ!かわいいの!っていう妹の隣で、いつまでたってもその妖精は見えなかった。

不思議に思って他の場所の妖精を見ると、見つけるのは大変だけど確かに見える。見えなくなったわけじゃないんだ…ってほっとしたものの、ピンクの妖精はどうしても見えない。

ここと・・・ここと・・・ここ??みたいなのを何回か繰り返しているうちに、妹は私とは少しずれたところを指さしていることに気が付いた。

母と同じように私が「妖精さんごっこ」をしていると思って、合わせていたらしい。

 

 

こういう意味もない思い出のようなものをふいに思い出して、数日考えてる時がある。

これも4日くらい頭の中に居座ってる。

あのときに感じたどうやってもわかってもらえない感じとか、裏切られたような気持ちをなんとなく思い出したりする。

もちろん母も妹も、私をそんな気分にしようと思ったわけではなく、私と一緒に楽しく過ごそうとしてくれただけなので、勝手にそんな気持ちになられても…て話だと思うけど。

 

それに、もしかしたら妹は私とは違うその場所に、本当にピンクの妖精が見えていたのかもしれない。

母からは妖精ごっこで遊ぶ仲良しな姉妹に見えていたはず。

本当のことはよくわからない。私の頭の中だけのことかもしれないし。

そのテーブルはもうないような気がする。捨てたのか、売ったのか…もしかしたらどこかにしまい込んであるだけなのかも。

もしできるなら、木目の中に妖精は本当にいたのか確かめてみたい。

でも、テーブルのその場所を探したとしても、大人になってしまった今の私にはもう何も見えないのかもしれない。

日記

Posted by ゆらり