『変身』のこと。
「ある朝起きると大きな虫になっていた」
フランツ・カフカの『変身』という小説。
先日読了したんだけど、それ以前にも数回読んでいる本。
ここ最近の私は、最悪のうつ状態からは回復してきていて、読書ができるくらいの集中力も戻ってきた…ような気がしてる。
とはいえ、本を新しく購入するようなお金の余裕はないので、著作権の消滅した作家の本を探して読んでる。とりあえず読んだことのあるものから読み始めて、その作家の他の作品も読んでみたり、関連で出てきたものを読んでみたり…。
この『変身』も次は何読もうかなーってなっているときに出てきて「この本持ってたなー。好きだったのかな」って読み始めた。実はお金に困ったときに持っていた本は全部売ってしまったのだけれど、これはけっこう後まで手元に残してあったもののうちの1冊だったので、きっと気に入っていたんだろうと思って。
読み始めてすぐに、どういう気持ちで読んでいたのか思い出した。
ある日突然、朝起きたら何もできなくなって、周りを困惑させ、迷惑をかける虫になってしまう男は、不登校になったときの私みたいだった。
何か月もうつ状態のまま、何もできないまま、自分の周りの人に迷惑と心配をかけながら閉じこもってる様子が、自分に重なって仕方がなかった。ただ生きているという状態がまさに『変身』の虫みたいで。
同じように不登校とか、引きこもりとか、うつ状態とか経験した人だと「あー、あるある」って思うことだらけだと思う。
この虫はあの時の自分だなーって。この家族の反応は、あの時みたいだなーとか。こういう気持ちになってたなーとか…。私が読んだ時も、いくつもいくつもそういう箇所があって…不登校だった中学生当時はいろいろ考えちゃったんだろうなーと思う。
そう過去のことのように言ったものの、私は今も治療中なので…。うつ状態になれば、やっぱり引きこもって虫になっちゃう。
この虫をうまく閉じ込めるか、もしくは永遠にさよならしたいところなんだけど、なんだか私はもう一緒に生きていくしかない気がしてる。
せめて虫が暴れたり、人に迷惑をかけたり、…死んだり…する前に人間に戻れるようにしようと思う。
そんなことを考えながら読んでいたこの本、最後にはとうとう虫が死んで、家族は再出発!将来に希望も見える明るいラストなのに、自分に重ねて読んでいた分だけ少し寂しかった。彼も人間に戻れたら良かったのにね。
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